誤れる芥川龍之介像・芥川文学像の氾濫を黙視しがたく……
文学教育研究者集団著 熊谷 孝編
芥川文学手帖 
    責任編集者:熊谷 孝(くまがい たかし)
国立音楽大学名誉教授。文芸認識論専攻。著書『芸術の論理』(三省堂)、『井伏鱒二』(鳩の森書房)、『太宰治』(同)、他。


文学教育研究者集団:

1958年、「文学と教育の会」として発足。1960年、改称成立。1983年、学術会議・学協会協力団体となる。

編集委員:
荒川有史、夏目武子、山下明、佐藤嗣男、高田正夫
  
1983年11月30日
みずち書房 発行

四六判 200頁(付、折込み年表)
定価 1442円
絶版

 
 文学教育研究者集団に集う私たちは、自分たちの研究・学習の場を〈私の大学〉と呼んでいる。〈私の大学〉というこの呼び名は、いうまでもなく、マキシム・ゴーリキィの作品の題名に由来している。それは、ゴーリキィの徹底したアマチュアリズムの学問精神と文学愛に学ぼうとする、自分たち自身の基本精神を常時、相互に確かめ合うための合い言葉でもある。(…)
 若い、後続の世代の明日へ向けて責任を負うためにも、教師は、自分自身の内面に〈私の大学〉を回復する必要がある。とりわけ、文学教師にとってそのことが必要とされる。(…)
 文学教育研究者集団は、創立以来、四半世紀のあいだ、〈文学史を教師の手に〉ということを合い言葉にして、文学研究と文学教育研究とを相即的なものとして統一的に追求してきている団体である。(…)
 文教研の構成メンバーの多くは、小・中・高・大の教師であるが、しかし教師に限定されてはいない。さまざまな分野に携わる研究者、社会人、学生や主婦など、さまざまである。メンバーに共通しているのは、自身に文学を必要としている人たちだ、という点だろう。また、その文学愛が必至的・必然的に文学教育への情熱に結びついているような人びとだ、という点であろう。
 この小冊子は、そうしたメンバーによる、文教研・私の大学の場での、芥川文学を対象とした年来の共同研究の中間報告である。熟していない点のあることは自覚しているけれども、誤まった芥川像・芥川文学像の氾濫に対しては黙視しかねるものがあるし、みずち書房の守屋秀生氏のおすすめにしたがい刊行にふみきった。(…)
 (「はじめに」より) 
 
  内 容

     はじめに


T 序 章

   なぜ、今、芥川文学か  熊谷 孝
   文学教育の視点  夏目武子
   芥川研究資料


U 小 説〔一〕

   初期の芥川文学
   仙人/黄粱夢
   羅生門
   鼻/或日の大石内蔵助
   芋粥
   猿   
   煙草と悪魔〔付〕煙管
   貉/龍
   偸盗
   袈裟と盛遠
   地獄変〔付〕戯作三昧
   尾形了斎覚え書
   奉教人の死
   糸女覚え書
   “赤い鳥”と芥川
   小説
〔一〕教材化と授業の視点


V 小 説〔二〕

   枯野抄
   蜜柑〔付〕沼地
   葱
   秋
   南京の基督
   藪の中
   俊寛
   トロッコ
   六の宮の姫君
   雛
   大導寺信輔の半生
   玄鶴山房
   河童
   小説
〔二〕教材化と授業の視点


W 随 想

   日光小品
   大川の水
   松江印象記
   侏儒の言葉
   追憶
   本所両国
   ロビン・ホッド
   芭蕉雑記/続芭蕉雑記
   西方の人/続西方の人
   随想 教材化と授業の視点


X 評 論

   文芸一般論他
   大正八年度の文芸界他
   明日の道徳
   評論 教材化と授業の視点
 

  芥川文学略年表


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