〔新刊紹介〕      

  野崎 歓 『水の匂いがするようだ 井伏鱒二のほうへ (集英社 2018.8刊)
 (本文より)ユーモア小説として、さらには「ナンセンス」小説として読むことも可能な些末さや浮薄さをも帯びながら、しかし初期の井伏作品は二十一世紀の読者にとって思いがけないほど新鮮で強い感動を与える。それがはるかのちに訪れる「高度成長」の時代とは対極的な先行きの不透明さと不況感を背景に、若者の孤独を中核とした物語群であることもその大きな一因だろう。
[抜粋]
 
 
  紅野謙介著『国語教育の危機――大学入試共通テストと新学習指導要領 (ちくま新書 2018.9刊)
(同書カバーより)「大学入試センター試験」に代わって新しく導入される「大学入学共通テスト」。試行テスト等の内容を見る限りでは、本当に国語の大学入試問題なのかと首をかしげたくなる。新テストは、「新学習指導要領」の内容を先取りする形で作成されており、これが文部科学省の目指す理想形だとしたら、いま国語教育は重大な危機に瀕していると言えよう。「大学入学共通テスト」と「新学習指導要領」をつぶさに分析し、そこからいま見える国語教育が抱える問題点を指摘し、警鐘を鳴らす。
[抜粋]
 
    勝又 浩著 『山椒魚の忍耐――井伏鱒二の文学 (水声社 2018.10刊)
(同書より)戦争のために旗を振らなかった井伏鱒二は、平和のためにも旗は振らない人なのだ。しかし、それ故にこそ、それはこの人々の不幸、日本そのものの不幸、そしてそういう不幸を作りだしてしまう、戦争を繰り返す人間そのものの悲しみにまで届いた小説家なのだ。
  
   

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