熊谷 孝 責任編集/文学教育研究者集団 著
文学教育の構造化文体づくりと総合読み
           
『文学教育の構造化』函
 今回は、六八、六九年度の研究・実践の成果を総括・集約して、『文学教育の構造化──文体づくりと総合読み』と題して公刊することにした。“文体づくりの国語教育”を、いわば“文体づくりの文学教育”という面にしぼり、その文学教育の方法的実践形態を“構造化”という形で示そうとしたわけである。
 構造化── それは、構造論的なモデル(模型)づくりという意味である。さらに言えば、文学教育活動の構造を動的な過程的構造としてとらえ、現実に行なわれている(あるいは、行なっている)教育活動の構造をそれとして把握するにとどまらず、可能にして必要な実践形態を具体的な構造としてつかみとろうとしたわけである。
 
(本書「序章」より) 
1970年11月15日
株式会社 三省堂 発行

A5版334頁
定価1200円
絶版
責任編集者:熊谷 孝(くまがい たかし)
法政大学文学部国文学科卒。文芸学専攻。現在、国立音楽大学教授。文学教育研究者集団に所属。著書 『新しい日本文学史』
『芸術とことば』『文体づくりの国語教育』他。編著『講座日本語』『日本児童文学大系』他。[執筆者紹介による]
      
  内 容

●序 章 文学教育の構造化


●第一部/印象の追跡としての総合読み

  1. 読みの過程的構造
    1. 読みとは
    2. 読みの三層構造
    3. 立ちどまるということ──読みの特性をふまえて

  2. 総合読みの方法原理
    1. わく 組みによる認知を成り立たせること
    2. 自己の文体を自覚する
    3. 文章に結びつける読み
    4. 文体的発想の変革をめざす読み
    5. 表現過程をたいせつにする読み
    6. 読みの方法の自己規制

  3. 文体と総合読み
    1. 総合読みの心的基盤
    2. 場面規定(一)
    3. 文体において読むということ──場面規定(二)
    4. 描写文体と説明文体


●第二部/教材体系の構想

  • 読むべき時期に読むべき文体の作品を
    1. 未来への豊かなイメージを喚起するために
    2. 発想の変革とことば自体の教育
    3. 教材──“私の文学”を基盤に
    4. 教材化──文学を文学として
    5. 発達における“紙ひとえの差”

  • 教材体系編成の基本的視点
    1. 文体のある文章を“群”として
    2. 生産と労働──総主題
    3. 文学体験を軸として──重要主題系列
    4. 構造化の一環としての教材編成
    5. 描写文体・説明文体相互のささえあい──ユニットの構成
    6. 中心教材と関連教材──具体例 一、二


●第三部/発達と総合読み

  • 同一教材による各段階の特質──『皇帝の新しい着物』の場合
    1. はじめに
    2. 小学校──中学年の段階
    3. 中学校──前期の段階
    4. 中学校──後期の段階
    5. 高校──前期の段階(定時制高校の場合)

  • 中学校後期を現在像として──『最後の授業』の読み
    1. 感情の素地──表現理解を規制するもの
    2. 総合読みのねらいを保障する第一歩
    3. 作品との出会いの場をたいせつに
    4. 読み手の凹凸率を調節する
    5. 発想づくりに焦点をおく読みの模型
    6. 基本テーマの言語化


●第四部/各発達段階の総合読み

  • 言葉体験の端緒的成立を確実に──小学校・低学年
    1. 体系化への視点
    2. 『おおきなかぶ』から『マーシャとくま』へ
    3. 教材体系──その一例
    4. 低学年段階の読みの特質
    5. 『おおきなかぶ』の総合読み
    6. 印象の追跡だ低学年の場合
    7. 総合読みのタイプ

  • 類型的把握からの脱却──小学校・中学年
    1. “善玉・悪玉の季節”の教材体系
    2. 『りょうしとさかな』の文体
    3. アンデルセン『さやからとび出た五つのインドウ豆』を中心に
    4. 一つの私案
    5. 中学年段階の読みの特質
    6. 『りょうしとさかな』の総合読み──作品の解き口をたいせつに
    7. イメージ・チェンジを迫る
    8. 飼いならされた人間の発想を吟味する

  • 具体的思考のさく組みをひろげる
    1. 構造化への準備過程とその展開
      ◇教材『牛づれ兵隊』

  • 自己規制のきく鑑賞を──中学校・前期
    1. 戦後児童文学の出発
    2. 喜劇精神の文学──『空気がなくなる日』について
    3. 悲劇のなかから新しいモラル──『あたたかい右の手』について
    4. 長編への取り組み──『ジャン・ヴァルジャン物語』について
    5. “人間−巨人”の発想を追跡する──『人間の歴史』について
    6. 中学校前期の読みの特質
    7. 笑いを保障する読み──再び『空気がなくなる日』について
    8. 父母の戦争体験を生かして──再び『あたたかい右の手』について
    9. 人生における“出会い”の意味をさぐる──再び『ジャン・ヴァルジャン物語』について
    10. 生き生きとしたイメージの実現──再び『人間の歴史』について


●第五部/文学体験確立期の授業構造

  • 生産と労働
    1. 働く者の連帯の回復
    2. 中心教材に黒島伝治『電報』を
    3. 『電報』の文体的特質をつかむために
    4. 教材化は後半に力を入れて
    5. 未知なる世界への関心を高める──作家の内側の紹介
    6. 作品の“顔”との対面をたいせつに
    7. 予測の変化──印象の追跡を
    8. 自己の発想のしかたの自覚

  • 真実への眼
    1. 発達の特質と文学の眼
    2. 『山椒大夫』の教材化
    3. 文学体験を軸とした教材体系の構想
    4. 鑑賞の方向づけを保障するもの
    5. 鮮明なイメージで、成長する安寿をつかむ読みの過程
    6. 文学理論意識・文学意識による印象の追跡

  • 戯曲『夜明け前』の読みをどう指導するか
    1. 教材化の基本的方向
    2. 作品の批判的再構成
    3. 戯曲『夜明け前』のストオリー──『月刊/新協劇団』のバック・ナンバーから
    4. 新しい視点による原作へのガイダンス
    5. 作品の創造的発展としての教材化
    6. 学習対象者に即して
    7. レーゼ・ドラマとして扱うことの意義とねらい
    8. どの面からどうアプローチするか
    9. 生徒たちとどう読み合うか
      ◇教材『夜明け前』


  • 文学とは何か──評論『小説の読みかた』を中心に
    1. 国語教科書における評論の位置
    2. 『小説の読みかた』──その構成と文体的特徴
      ◇教材『小説の読みかた』
    3. 準体験的発想によるイメージづくり
    4. 第一次的足場をどうきずくか
    5. 未知と既知とのバランスシートを確かめながら〈準体験 その一〉
    6. 日常性に返して考える〈準体験 その二〉
    7. “文学の眼”による追跡──読者である民衆に学ぶこと

  
  あ と が き
  
   執筆者紹介



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