荒川有史 著
西鶴世代との対話 歴史と文学をつなぐ


1996年7月7日
こうち書房 発行

A5判 270頁
定価 2500円
(書店で発売中
 本書は、『西鶴 喜劇精神の文学』の姉妹編である。(中略、『母国語ノート』『西鶴 人間喜劇の文学』『日本の芸術論――内なる鑑賞者の視座』に続く)第四冊めの『西鶴世代との対話』では、ふたたび〈西鶴世代〉という切り口から、〈作家の内部〉を解明することに留意した。〈新興町人中層者二代目〉の視点が、創造主体西鶴の内部において、どのようにして形成され、深まっていったのか、追跡してみたのである。また、〈人は化物〉という西鶴の発想が、創造過程の内部においてどのように具体化され変容していったのか、という課題もあわせて考えてみた。(本書前文より)
著者:荒川有史(あらかわ ゆうし)
1930年、宮城県に生まれる。1956年、法政大学日本文学科卒業。文学教育研究者集団所属、日本文学協会・日本近世文学会会員。著書、『文学教育論』(三省堂)『母国語ノート』(三省堂)『西鶴
人間喜劇の文学』(こうち書房)『日本の芸術論――内なる鑑賞者の視座』(編著、三省堂)『文学教育の構造化』(共著、三省堂)『芥川文学手帖』・『井伏文学手帖』・『太宰文学手帖』(共著、みずち書房)ほか。
 ◆ 内 容


   
〈西鶴世代〉の発見へ向けて――まえがき風の覚え書


T 〈西鶴世代〉(熊谷孝)の発見


一 文学としての『日本永代蔵』
  1. 西鶴文学の読者基盤
  2. 転形期を生きた人びと
  3. 新興町人の形成過程
  4. 史実と虚構の間――児童文学と成人文学との対比において
  5. 対話志向の文学精神
  6. 作品形象から見えてくるもの
  7. 文学以前か文学か
二 円熟否定の完結志向――『世間胸算用』
  1. 方法としての喜劇精神
  2. 『世間胸算用』の文体
  3. 未熟・未完結志向から完結志向へ
三 人間喜劇の構造性
  1. 喜劇精神の定位
  2. 〈二代目〉創造の視角
  3. 非情なリアリズム
  4. 人間の条件
四 西鶴文学にみる世代意識と虚構精神
  1. 喜劇精神を準備したもの
  2. 〈内なる読者〉としての〈本来の読者〉
  3. 〈西鶴世代〉の特性


U 西鶴・芭蕉・近松

一 芭蕉俳諧の時期区分
――芥川龍之介の視座を通路に
  1. 蕉門一座の人間模様
  2. 風狂精神の連続・非連続――芥川にみる時期区分意識
  3. 文学史一六九〇
二 西鶴と近松との間――北村透谷の視座をめぐって
  1. 透谷の見た『五十年忌歌念仏』の世界
  2. 透谷の見た西鶴像
  3. 『好色五人女』の位置


V 西鶴文学研究史覚え書

一 西鶴の再発見――倉本初夫「今日に立つことの必要」を中心に
  1. 西鶴・芭蕉・近松が生きた時代
  2. “こんにち”に立つこと
  3. 文学史の内側から〈近世〉を見る
二 西鶴文学の読者――「西鶴の創作意識とその推移」(中村幸彦)を読む
  1. 同時代の証言
  2. 〈俗源氏〉という言葉に託されたもの
  3. 創作意識をさぐることの意味
  4. 〈俗〉の問題を通路に
  5. 文学史の中の西鶴
  6. 現代史としての文学史
三 浮世草子の文体――森銑三『一代男新考』を射程に
  1. 『好色一代男』の文体的変化
  2. 主題展開の軌跡
  3. 西鶴文体の原点
  4. 『一代男』の人間模様
  5. 西鶴文体成立のたしかな手ごたえ
  6. 鑑賞体験の総決算の行方

あとがき

西鶴・芭蕉年譜

索引

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