文学と教育 ミニ事典 |
●小 説 | |
文学、とりわけ小説は、単なる特殊に対象を見つけるのではなくて、実人生にかかわる、(…)普遍的な問題を対象化してとらえようとするのですね。言語形象による普遍的な問題のイメジャリな対象化・客観化だ、と言ったらいいでしょうか。 私、くどいくらいに言っておきたいと思うことは、小説は、日常茶飯事のごくありふれたことに課題を見つけるんだ、ということですね。その、ありふれたことというのが普遍的なことなのですからね。「事実は小説より奇なり。」というバイロンの言葉は、あるいは旧い一時期のロマンについては当て嵌まるかもしれないけれど、、私たちが現在必要としているような小説は、決して奇 を追うものではないわけです。少しく図式的な言いかたをしますと、文学・小説は、最も普遍的な性質を具えた個を、その普遍の中に探り求めて、描写という表現手段によって形象的造型を行なおうとする営みだ、ということにもなりましょうか。〔1978年、熊谷孝著『井伏鱒二――〈講演と対談〉』 p.64-65〕 |
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