文学と教育 ミニ事典
  
相互主観性 
 相互主観性(…)、それはまず、自分の意識や自我の意識、自分の主観性というものが他者の主観性との関係を離れては存在しえない、という意味での相互主観性ということです。これは実は、客観と主観との関係・関連の問題なのでして、主観の反対語は客観だ式の言いかたは、国語辞典的な説明としてはそれでいいのかもしれないが、実際の役には立ちません。また、主観というのは客観の反映だ、というような説明も、間違ってはいないのでしょうが、釘が一本抜けている感じです。同じ反映だとしても、主観相互の媒介的反映だ、ということになるでありましょう。
 同一世代に属する人びとの主観相互の間にある共軛性が見られるのが普通であると同時に、どこまで対話を続けてみても埋め尽くすことのできない何かが相手との間に残る……つまり私は私であって相手とは違う、という主観の問題は、普遍と個の問題に対象を見つけようとする文学にとっては抜き差しならない問題になるわけです。〔1978年、熊谷孝著『井伏鱒二――〈講演と対談〉』 p.196〕


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