文学と教育 ミニ事典
  
連帯の回復/連帯づくり
 働く国民大衆相互の連帯の回復ということを、わたしは、民族の最も緊急な今日的課題として考えている。民族とは、第一義的には、その民族社会の生産労働の担(にな)い手である国民大衆=民衆のことだからである。その民衆相互の横の連帯が、しかしわたしたちのところではズタズタに分断されてしまっている。そのことで、また、民衆生活の窮乏と民族文化の停滞、戦争と滅亡へ向けての民族の危機が助長されつつある。民衆の連帯の回復という点に自己の実践的課題を見つける理由である。
 で、そうした民衆相互の
連帯の回復ということを、教育の場の問題として子どもや若者たちの将来へ向けて考えようとするところから、ここにいう“文体づくりの国語教育”がスタートすることになるのである。論点に関して結論から言うと、次のようなことである。
 民族の今日的要請に応える民族教育――日本の教育――の課題は上記のような意味において、子どもたちのあす へ向けての
連帯づくり ということにほかならない。あるいは、そのことに中心課題を求めつつ、究極においてその課題の達成を目的として行なわれるところの、すぐれて人間教育としての意味を持つ教育活動が民族的な教育活動である、ということなのだ。いわば、そうした連帯づくりの民族教育の最も基本的でかつ主要な一環として営まれるところの母国語の教育、それが“文体づくりの国語教育”である。国語教育は、文体づくり という営みにおいて、連帯づくり という民族教育の教育目標に奉仕するのである。それの最も基本的、根源的な面において奉仕するのである。〔1969年、熊谷孝著『文体づくりの国語教育』p.190-191〕
    

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