文学と教育 ミニ事典
  
インプリケイション
   今、お話にあったインプリケイション(言葉の含み、意味)ということですが、概念というものが必ずもっているインプリケイションに導かれて、当面の問題も、また関連する他の問題も解決への足場が用意されることになるのだ、というランガーの詩的は、ぼくにとって教訓でしたね。
熊谷  概念にも、それからイメージにも必ずインプリケイションがあるわけなのでして、だからして観念・概念に支えられ、イメージによる造型という形でもたらされる言語形象、芸術形象は、ある意味ではインプリケイションにおいて成り立つとも言えるわけですよ。たとえば、森鴎外の歴史小説の文体が、行間に内容を感じ取る以外に文学の表現として受け手に訴えてこない、乾いた文体だというのも、これは、インプリケイションということを概念に関してだけじゃなくて、イメージ、ビルト(形象)、芸術形象、文学・芸術の認識と表現の問題としてつかみ直すとおもしろいと、ぼくは思うんだけどね。そういうつかみ直しが、ぼくの言う、概念をより有効な概念に組み替える、ということでもあるわけなんですけれど――。
〔1973年、熊谷孝著『芸術の論理』p.52〕



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