『文学と教育 ニュース版』 bR (1977.4.30)
  
   〈文教研・春の合宿研究会〉『富嶽百景』にとり組む――総合読みの原理を確かめつつ     
     
   春の合宿研究会は、3月27日から29日まで、八王子の大学セミナー・ハウスで行なわれた。
 プログラムは、(1)『文学史の中の井伏鱒二と太宰治』の、合評形式による検討、(2)熊谷先生による基調講義=「総合読みの何≠ニいかに≠ニ」、(3)ゼミナール『富嶽百景』(太宰治/一九三九)の総合読み(熊谷・福田両チューター)、の三部構成であった。
 熊谷先生の講義は、文教研の提唱する「総合読み」の、認識論的根拠と原理とを体系的に明らかにされたもので、参会者一同、その最先端の理論を感銘深く学んだ。それは同時に、私たちの、「印象の追跡としての総合読み」を口にしながらどこかで「解釈」に辷っている、その読みのありようを、実践的に厳しく問うものであったと思う。『富嶽百景』の作品把握は、したがって、この講義に示された方法原理に立ち返りつつ、進められていった。
 ここでは、当日のレポーターの一人であった木内さんに、『富嶽百景』ゼミを中心に、研究会の印象を語ってもらうことにする。熊谷先生の講義については、当日参会者に配布された「報告レジュメ」を、そのままの形で再録させていただくことにした。後日、ゆとりある誌面で、いま一度、先生に論を展開していただければ……、と願いながら。
  
 
   
 
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