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 2011年 文教研秋季集会 ご案内     [集会要項]
 人間信頼に賭ける文学とは? ――井上ひさし「ナイン」
 長い東西対立の冷戦を抜け出て、平和への明るい萌しが少し見え始めた矢先に、アメリカで無差別テロ事件が発生した。それが皮肉にも21世紀の幕開けを象徴する事件となり、その後10年が過ぎてしまったが、世界の人々は一層深い不信と不安の時代を生きようとしている。
 そして日本では未曾有の大震災が東日本を襲い、同時に福島の原発も破壊され、その安全性は信頼を大きく損ねることとなった。
 今、ヨーロッパのユーロ圏危機にも見られるように、世界は政治も経済も混迷の時代にあり、その根幹にあるべき信頼と連帯も危機に瀕している。しかし一方で今回の大地震で、被災者たちが冷静にみんなで助け合っている姿を見て、世界の人々は驚き賞賛を惜しまないでいる。そして世界の多くの国々から温かい支援を受け続けていることも事実である。

 井上ひさし氏は哲学者嶋田豊氏との対談で次のように語っている。「あらゆる局面で必死に努力して生きていくことが大切なんだ、というのがまずあります。その上であの暗い時代の中で必死に助け合って生きている人間がいたという事実を見る。それを継承し、絶望的な時代であっても精一杯生きていくと、それが次の世代に伝わっていかない訳はない、それが未来を担うということである、という意味で人間を信じる」と。それに続けて嶋田豊氏はロマン・ロランから受け継いだグラムシの言葉として「知性の悲観主義、意志の楽観主義」を引用し次のように語っている。「現実は絶望的だけれども、なんとかしたいと思うことの裏に希望を見ていることです。悲観と楽観の両方を合わせ持った緊張をつうじて、そこから現状からの活路が探求され続けるんだと思います」と。
 両氏の発想には、現実は厳しいけれども「なんとかしたい」という強い意志と、「なんとかなる」という人間信頼に裏打ちされた樂天主義が心臓の鼓動のように脈打っている。とはいえ私たち個人個人の条件や状況は様々に違い、国と国の間でも多くの利害の対立があり、そう簡単に問題が解決されるわけでもなく、また現実を生きる人間は間違いを犯しやすい存在でもある。だからこそお互いの立場を尊重し、人間を深く理解し合うことが必須であり、そのために優れた文学作品との出会いがとても大切だと思う。

 昨年の秋から続けて井上作品は3作目になる。今回「ナイン」という少年野球団を描いた作品を読み合うことで、皆さんと対話を深めていけたらと思います。

集会要項 
《ゼミナール》井上ひさし「ナイン」の印象の追跡

日 時 2011年11月13日(日) p.m.1:00〜6:00受付 12:30〜)
会 場 北沢タウンホール(3F ミーティングルーム)
           東京都世田谷区北沢2-8-18 (TEL 03-5478-8006)              
小田急線/井の頭線 下北沢駅下車、南口から徒歩4分
(小田急線新宿から急行7分、各停10分、あるいは、井の頭線渋谷から急行3分、各停5分)
北沢タウンホール交通アクセス

テキスト  井上ひさし「ナイン」(講談社文庫 井上ひさし『ナイン』所収) 
集会参加費  一般 2,000円  学生 1,000円
締切日  11月7日(月)
申込み手続き 
申込み用紙(振込用紙を兼ねる)は事務局にご請求ください。
・申込み用紙に必要な事項を記入し、参加費を郵便局でお振込みください。
締切日 11月5日(金)
問い合わせ、および申込み先 
    文教研事務局
                   

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