文学と教育 ミニ事典
  
芸術の課題
 芸術の課題は、したがってまた芸術家の課題と任務は、現代に対する現実的で具象的なイメージを用意することである。いわば、現代の実像としてのイメージを、それぞれのメディア(媒材)の加工によって顕在化することである。あるいは、メディアの加工によって実像としてのイメージを造型する事である。文学についていえば、ことばメディアの加工によってである。(…)

 感情を組み替えることでイマジネーションのありようを組み替え、自己のイメージの示す虚像性と実像性との交錯・対立を止揚・統一していく営みが虚構するということだ、ということになろう。
 サルトル(Jean-Paul Sartre 1905〜)ふうにいえば、それは、〈飼いならされたことば〉を〈野性のままのことば〉に戻す営みである。あるいは、そうした営みの中に虚構が実現する、ということなのである。野性のままの感情とことばを自己に回復することで、イマジネーションに活力と自由を与え、想像の自由な飛翔
(ひしょう)によって、これが現代の実像だというものをつかみ取ろうとする、それが虚構――虚構精神である。「まちがっているかもしれないし、理論的には所詮仮説なんだが、しかしそれが自分たちの結論だというものを自己の責任において、これが現代だ、現代というものだ、これが現代を生きる人間の生きかただ、というふうに大胆にぶっつける。それが文学だ。虚構するというのは、そういうことだろう。」という意味のことをある現代の作家は語っているが、論理的にオチコボレはあるにしても問題の核心を突いた整理だと思う。〔1969年、熊谷孝著『文体づくりの国語教育』p.22/ 改稿 1973年、熊谷孝著『芸術の論理』p.109-111〕


 ○芸術の課題芸術家の任務をわたしは、(…)実践――実践的行為を促し支えるようなイメージづくり、すなわち形象へ向けてのイメージの造型ということに限定して考えるのである。さらに言えば、典型(Vorbild――虚構において未知が探られ、その未来がさき取りされた“現実”のビルト=形象)の名に価するようなイメージづくりということにその課題、その任務を限定して考える、ということなのである。〔1973年、熊谷孝著『芸術の論理』p.131〕   


〔関連項目〕
現代芸術
芸術家(作家)の任務
典型
形象
現実
実践

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