「文教研メール 120」 (2005/4/30)


井筒君

 先日はおでかけくださり、ありがとう。久しぶりで会うことができ、変わらぬ君と話ができたことをほんとうにうれしく思いました。

 今日、『ケストナー文学への探検地図』を ――Wの『作品紹介』を除いて―― 読みました。ケストナーのことは、多少知ってはいたものの、作品をまだ読んだことはありませんでした。だから、まだ「地図」をもって、ケストナーへの入り口に立っただけのところですが、なんだか、もうかなり歩いてきたような気分になってもいます。文学を専門にしている人たちの「読み」というのは大変なものですね。
 座談会がまたすばらしい。ぼくはその昔、『マルクス経済学レキシコン』の「栞」のために「談話室」という部分をつくるのにかかわったけれど、この本の二つの座談会を見ると、まったく顔色なしです。生き生きとしていて、しかも、知識のない読者にも十分に情報を提供しながら、歴史的な事実や細部にわたる考証をやっている。これは、出席している皆さんがケストナーに惚れ込んでいるだけでなく、授業実践などを通じて作品にも通暁しているからでしょう。
 この本を通じて、ケストナーという人物のあり方に大いに引きつけられました。そのうちにぜひ読んでみたい。そういうわけで、「作品紹介」は読まないでおくことにしたというわけです。「年譜」もよくできていますね。読める「年譜」はめずらしい。
 残念なことに、邦訳の『全集』はまだないようですね。ドイツ語のものもそのうちに探してみたいと思っています。
 あした『経済志林』の「記念論文集」をお送りすることにしています。
 どうぞ、お元気で。
 大谷禎之介 (Teinosuke Otani)


 井筒満氏の事務局宛メール

 先日、大谷先生の法政大学退任を記念する会があり、その折に、『ケストナー文学への探検j地図』を差し上げたところ、さっそく、メールで感想を寄せてくださいました。「ぜひ、研究会の仲間にも紹介したいのですが」とお願いしたところ、「もちろんかまいませんが、ど素人の埒もない感想ですから、紹介するに値するようなものではないと思いますよ。」とのご返事でした。しかし、私は、私たちの研究・教育活動を励ましてくれる素晴らしい文章だと思います。
(ちなみに、私は、法政大学在学中に大谷ゼミで『資本論』を学びました。また、大谷先生は、以前、例会で紹介した『図解 社会経済学』(桜井書店)の著者であり、現在のマルクス経済学研究・『資本論』研究において、世界的な影響力をもつ研究者の一人です。)



『ケストナー文学への探検地図』紹介書評目次