「日本教育新聞」(2005/02/25) 童心にいざなう作品たどる「飛ぶ教室」「エーミールと探偵たち」など、子どもから大人まで幅広い読者を持つケストナー文学の入門書である。「人生の〈母国語〉の教師たらんとする人々の〈文学と教育〉の研究の場として」、昭和三十三(一九五八)年に「文学と教育の会」として発足し、二年後改称した「文学教育研究者集団」の手によるものだ。 エーリッヒ・ケストナーはドイツのドレスデンに生まれ、第一次世界大戦から第二次世界大戦の中でワイマール体制崩壊、ナチス・ドイツの出現といった歴史の激動期に、「子どもの心を忘れずに勇気を持って生きることを、美しい民衆の言葉で語りかけた作家」である。 「心の晴れやかさに到達するための教育」「ユーモアは適切な観点を教えてくれる」「有益で必要な単純化」などケストナー語録から始まり、「飛ぶ教室」をテーマにした座談会と「エーミールと探偵たち」「点子ちゃんとアントン」、詩抄などの作品を取り上げた「ケストナーとの対話(一)」、座談会「動物会議」に「わたしが子どもだったころ」や「ケストナーの終戦日記」を論じた「ケストナーとの対話(二)」、「作品紹介」では「小さな男の子の旅」「おかあさんがふたり」「ファービアン」など十二の物語を取り上げる。 関係資料には「年譜・ケストナーの生活と文学」で、その誕生から死去までを読みやすくまとめている。(徳) ‖『ケストナー文学への探検地図』紹介‖書評目次‖ |