初期機関誌から

「文学と教育」 第40号
1966年9月10日発行
 ≪声明≫ 民間教育団体の内部攪乱者について        一九六六年八月三日   文学教育研究者集団    
  文学教育運動は、いま、新しい段階にさしかかっている。独占の期待する人間像に抗し、自他の連帯の回復と民族の未来の先どりをめざして、文学史の視点から自己の仕事を見なおそうとしているのである。
 民族の未来をになう子どもたちに、人間規格品化のねらいをもつ教科書教材を与えつづけることは、わたしたちの良心にとってきわめて苦痛なことである。また、教科書教材をいかにこなすか、といったふうの子どもを疎外した非教育的な発想に迎合することも、よりいっそう苦痛なことである。
 一億総白痴化を教育の分野で遂行しつつある文部行政。その圧迫をはねのけ、わたしたちの生活と権利を擁護するたたかいは、こんにち、教室の内部でのたたかいと結びついてこそ、より発展する契機をもつ。
 そのたたかいの一環として、わたしたちは文学教育運動を位置づける。そして、いま、文学教育は、文学史と発達への関連において、新しい教材群の再組織を、緊急な課題として要請しているのである。けだし、子どもの意識の変革は、一作品による一本勝負方式では実現するものではないからである。
 右の課題は、ところで、民間の一教育団体のよくなしうる所ではない。実験的な実践をもちより、理論的に検討し、自己批判と相互批判とのつみ重ねの上に、はじめて達成し得る性質のものである。
 ところが、ここ二、三年来、自己の主張にあわぬ見解を、文部省の意見と同一であるなど、論証ぬきにわめきたてる人間が登場してきている。
 その人間は、戦前からの戦闘的かつ良心的な一民間教育団体の常任委員としての肩書きを悪用し、公器であるべき機関誌上で、文教研のメンバーを名指しで、毒づいている。
 文部省から勲章をもらうであろうというくだりにいたっては、この人間の常識を疑わざるをえない。眼にあまるその行動と意見に対し、論理的な批判が加えられると、文部省までふくめた統一戦線が結成されたと、ヒステリックにわめく。
 わたしたちは、こうした人間を内部攪乱者として批判し、相互信頼にもとづく相互批判のうえにのみ、民間教育団体の真の友好と団結があることを、広く訴えるものである。
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