初期機関誌から

「文学と教育」第25号
1962年8月20日発行
  第五回研究集会 略報 

 前日までの大雨にかわって、二十七日は朝から、秋を思わせるような、どこまでも深い青い空。開会の時間になってもちょっと集まりが悪いので、一同、少しばかりあせりを見せた。あまりの快晴で、たまった洗濯物を処理していて、みなさんの出足が鈍ったのだろうと、観測筋の発表だった。そんな噂話をしている時に、蓬田さんがみえた。洗濯を済ませて来られた由。観測筋の的確さに、一同拍手。
 開会を約三十分遅らせて、まず、福田さんの実践報告から始めた。そのときは参会者も四十名をこしていた。
 福田さんは、ご自分の実践を正しく整理され、@一つ一つのコトバと、作品の関係 A国語科における思考ということを中心に Bいわゆる四領域の教育では、国語教育は達成されないと結論された。
 ついで、寒川さんが、生活綴方運動について、その位置づけと、今後の問題点をあきらかにされ、さらに、鈴木さんらが、日文協大会における文学教育について、その成果や、批判を中心にした報告を行なった。
 午後からは、熊谷さん、荒川さんが報告され、午前・午後の報告をめぐって討論がなされたわけだが、当日の圧巻は、熊谷さんの報告であった。 くわしい報告は、本号“文学教育的モティーフ――芸術過程と象徴過程(一)――を参照いただきたいが、とにかく、非常に論理的で、しかも、具体的な報告であった。とくに、文学教育概念自体のアイマイさを突いた報告や、国語教師としての条件など、新しい視点からの問題提起が印象的であった。
 なお、川合先生の講演は、中国旅行の体験をおりこんだ、興味ぶかいものであったらしいが、私用で、拝聴できなかったのは残念であった。
 一九六二・六・一八   佐藤和男


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