初期機関誌から
「文学と教育」第6号 1959年4月5日発行 |
三月研究例会の問題点 |
1 科学の対象は、世界(一つ)であり、文学の対象は現実(多)である。 2 科学の方法によって抽象化された一つの世界、それが科学的世界像である。 3 文学の方法によって獲得されたもの、それは典型的現実像である。 4 いいかえれば、客体は一つであり、その対象化の仕方のちがいにより、認識の二つのポールである科学と文学とにわかれる。したがって、対象と方法を、より相互的な関連のもとにとらえる必要があるだろう。 5 また、科学の表現と文学の表現との質的な相違から、対象と方法の問題を追求していこう。 『資本論』第一巻では、イギリスを舞台として、資本の本源的蓄積の歴史的過程が実に見事に表現されているが、著者は典型的方法を駆使している。科学の表現は、典型的認識を含みこむことで、よりすぐれた訴えを実現している。 『戦争と平和』では、歴史論文といってもいいものもはいりこんでいる。が、それは単なる説明の部分ではなくて、準体験的表現に統一されている。 三月研究例会――3.13(金) 午後六時半 司 会 徳永桂吾 報 告 小沢雄樹男 出席者 (十三名 略) |
‖「文学と教育」第6号‖初期機関誌から‖ |