N さんの例会・集会リポート   2010.12.26-27冬合宿  
   
   「戯曲 『夜明け前』/「きらめく星座」/総会
文教研のNです。
いつものように年末も押し迫った12月26・27日、都心より何度か低い八王子で冬合宿が行なわれました。
Sさんは来年からの復帰でまだお休み、Hさんがご両親の介護で出席できず、演劇に詳しいMさんも思いがけずの骨折という心細い面もありました。
しかし、秋季集会に引き続き広島からYkさん、沖縄からMuさんが初参加。若手“女子”が支えてくれた合宿でした。

内容は、@「戯曲『夜明け前』(原作・島崎藤村/脚色・村山知義)の読みをどう指導するか」(熊谷孝 責任編集・文教研著『文学教育の構造化/文体づくりと総合読み』三省堂/1970)の検討A井上ひさし「きらめく星座――昭和オデオン堂物語」(集英社/その他、新潮社『井上ひさし全芝居 その四』所収)の印象の追跡(DVD鑑賞を含む)B総会、でした。

Aはまだ継続中ですので、ここでは@を中心に二つの角度から振り返っておきたいと思います。

1 戯曲の特徴
創作の場は常に内なる対話の相手との共同作業ですが、特に戯曲の特徴はそれが眼に見える共同作業である点です。
脚本家、演出家、役者、さらにその場の観客とともに実現する芸術現象です。
どういう時代にどういう人々によってどういう観客を前に上演されたのか。
それは戯曲を教材化する場合に欠かせない点だという指摘がありました。
また、レーゼ・ドラマであるということは、基本的にセリフのやりとりを中心に舞台はひとつという構造、その静的な舞台の中で同時的に人間が動いているという、言葉と言葉以外のもののかかわりを意識していかねばならないことがそのジャンルの特性であることが話題になりました。

2 戯曲「夜明け前」の教材化をめぐって
中学現場で森鴎外「最後の一句」を扱った経験なども出され、場面規定をすることの重要性と難しさが話されました。
存在と意識の問題をつかませることはきわめて大切です。
それこそが自我の原点、“私の中の私たち”“私たちの中の私”を育てていく条件だからです。
半蔵やおまん、いちや「おばあさま」の鮮明な姿をイメージすることは、歴史の中で矛盾に苦しみながらも可能性を探って生きる人間について考えることです。それは歴史を考えていくときのイメージの支えとなるはずで、教材化の視点としてきわめて大切なのです。

こうした検討を踏まえ、さらに井上ひさし「きらめく星座」の印象の追跡は続きます。


〈文教研メール〉2011.1.8 より


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