全国集会総括2、井上ひさし「握手」
文教研のNです。
遅くなりましたが、前回例会のポイントだけ振り返ってみたいと思います。
前半は、全国集会、安部公房「赤い繭」(新潮文庫『壁』所収)の総括でした。
I 、T 二人のチューターの発言を中心に、自然主義的文体を克服しようとする安部の文体の問題が話題になりました。
I さんは、あらためて最終場面を話題にし、男自体は絶望的ではないのか、しかし、“絶望”を描くということは“絶望”を結論することではない、自然主義文学とは、結論は“絶望”という創作方法であったが、その“絶望”を打破するための方法としてシュールレアリスムの方法が選ばれている、安部公房における脱自然主義の問題がそこにはある、云々、そうしたことを指摘されました。
後半は、秋季集会のタイトルを考えることも含めて、井上ひさし「握手」(講談社文庫『ナイン』所収)の印象の追跡でした。
短い時間でしたし、指導書など当日配布の資料も多くありました。特に、 I さん提供の哲学者・嶋田豊と井上ひさしとの対談「笑いの戦略」(1986年2月)は、共通に読んだ上で検討が望まれます。前回例会での印象の追跡の方向は秋季集会のタイトルに集約していると思いますので、それを記しておきます。本文の言葉を使い「“一人一人の人間がいる”――井上ひさし「握手」」となりました。「一人一人の人間」と「握手」という組み合わせのトータルとしていいタイトルではないか、という指摘もありました。
ということで、今日は秋季集会へ向け、あらためて井上ひさし「握手」の印象の追跡です。
【〈文教研メール〉2010.10.9 より】
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