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     ┃  ざぶらん通信   2011年03月15日(火) NO.090    ┃
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     ┃  発 信   流 木 RyuBqu               ┃
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     ┃     光┃や┃風┃に┃触┃れ┃な┃が┃ら┃     ┃
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このたびの地震により被害を受けられた皆様へ、
  つつしんでお見舞い申しあげます。

 3月11日、東日本にこれまでにない大地震が発生し、甚大な
被害をもたらしました。とりわけ津波による犠牲は大きく、集落
が根こそぎ消えるなどの報道を、胸つぶれる思いで見ました。
 岩手や宮城に住む知人や友人の安否が気遣われます。今は無事
を祈るほかありません。
 
 3月10日、この日のことを書いて、手を加えたものを翌日か
翌々日に予約配信するつもりでいました。
 まさかこのような大惨事が、翌日に起るとは知らず、春3月、
季節の便りを、懐かしみの中で書きました。
 きょう配信が可能になりましたので10日に書いたものはその
ままにお届けします。
 慰みになればとよいがと思いながら・・・
  
 被災地の1日も早い復旧と皆様のご健康をお祈りいたします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    
       花ゲリラ       
                         流 木

   どこかに花ゲリラでもいるのか
   ポケットに種子(たね)しのばせて何食わぬ顔
   あちらでパラリ こちらでリラパ!
   へんなところに異種の花 咲かせる         
                     (茨木のり子)
    
    ◆
 もう10年以上も前のこと、勤務校の高校生が通学途中で空き缶を他家の庭
へ投げ入れる不心得をし、抗議を受けたことがあった。
 生徒集会の折、これを注意し、ふと思い出したエピソードを話した。
 鎌倉に住む横山隆一という漫画家が、自宅と駅との行き帰り、ポケットに忍
ばせた花の種を垣根越しに他家の庭へパッパッと蒔いたという話である。
 ある日、思いがけない所に思いがけない花が咲いたのに驚くその家の人の顔
を思い浮かべて、ひとりクスクス楽しくなるというイタズラだった。
 こんなお洒落な神経を培いたいと思ったのだ。

 ところで生徒は、角帽かぶって着物に前掛け、下駄履きの「フクちゃん」と
いう子供が主人公のマンガをほとんど知らない。まして作者の横山隆一など誰
も知らない。まあそうだろう。
 この漫画家の邸宅跡が、今はスタバになっている。きょうもここへ寄った。
隣接しているスーパーで買物した後の、ここは私たちの「お休み処」なのだ。
コーヒー飲みながら、そんな隆一のエピソードを妻に話した。
 すると彼女が「茨木のり子の詩に同じようなのがあったわ。たしか<花ゲリ
ラ>という詩だったと思う」と言った。

 「ゲリラか、・・・近頃、聞かなくなった言葉だけど、神出鬼没のゲリラと
突然咲き出す花を結びつけたところが心憎いね」
 「家の花壇には毎年ポピーがワーッと咲くけど、あれは季節の花ゲリラね」
 そんな会話になった。
 そうなのだ。我が家の小さな三角花壇では、その季節になると、どこに隠れ
ていたのか、きまってオレンジ色のポピーがいっせいに咲きだす。
 正式にはナガミヒナゲシというそうで、可憐な花だが、それでもそれが突然
いっせいに風に揺れ始めるのをみれば、ゲリラの仕業と思いたくなる。

    ◆
 帰宅して、茨木のり子の詩を調べた。
 で、知ったのだが、この詩は処定めぬゲリラのように、処定めずパラリと投
げたり、投げかけられたりした言葉が、相手の心の中で記憶され、育まれ「異
種の花」を咲かせる、というものだった。
 ・・・懐かしく友人の言葉を取り出してみる。それは私を支えてくれた大切
な一言。でも、その友人はそんなこと言ったかしらと、忘れている・・・

    思うに 言葉の保管所は
    お互いがお互いに他人のこころのなか

 そうなんだよなぁと懐かしく思いあたり、ウッと痛み伴なって思いあたる。
言った当人は忘れていても、傷つけたり傷つけられたり、励ましたり励まさ
れたり、相手の心に刻まれた言葉が今につながる経験・・・あるよなァ。

 しかし、きょうのここでの通信は、傷つけたとか励まされたとかいうような
かたちで保管された言葉ではなく、ただ懐かしいというだけのそれを記そう。

 それは、祖母につれられて蓬(よもぎ)摘みをした折の、祖母の言葉。
 「ほら、菊の葉に似てるだろ。柔らかい葉っぱの先だけ摘むんだよ。根っこ
は来年のために残しとくんだからね、引き抜いちゃいけないよ」
 それは毎年同じ言葉だった。「もうわかってるよ」と言っても繰り返した。
5歳頃から10歳ぐらいまでの記憶・・・あるときは空襲警報のサイレンを聞
きながら、B29の編隊見上げながらの記憶のなかで・・・

 祖母はとっくに亡くなり、私も老いたが、数年前の早春のある日、幼稚園児
が先生に連れられてよもぎ摘みをしているのを見た時、あの祖母の言葉がパッ
とよみがえったことがあった。
 保管所の中で忘れられていた言葉の種が、あれも気まぐれゲリラの仕業だっ
たのか、とつぜん花をつけたようなものだった。

 この祖母が、所帯を持ったばかりの妻に「洗濯機でエプロンのような長い紐
がついたものを洗う時は、紐を片結びにするといいよ」と教えてくれた。当時
の洗濯機は、今と違って紐の類は他の洗濯物と絡まってしまうからだった。
 こんな何でもない日常の口添えが「妙に懐かしいのね。洗濯機の前に立つと
今でもA子おばあちゃんのその言葉を思い出すことがある」と言う。
 何でもない言葉がかえって懐かしい。ふしぎだね。

    ◆ 
 仕事がら、かつてたくさんの生徒に、たくさんの言葉を蒔いてきた。
 授業での言葉。脱線して本や映画や体験を語った言葉。怒り心頭怒鳴りつけ
た言葉だってある。卒業していく生徒へ贈った言葉もあった。
 ただ、それは聞き手の心の地面に落ちたのかどうか、それはわからない。

 そしてきょうも何処へ落ちるかわからない言葉の種を、この通信でパラリ、
リラパと蒔いています。
 むかし東京大空襲があった3月10日、春の通信です。


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    〔ざぶらん通信〕
   作 者:流木(RyuBqu)
   編集者:風間加勢
    発行日:毎月15日発行
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