N さんの例会・集会リポート   2006.12.26-27冬合宿、2007.01.13例会 
   
    「益田勝実氏の仕事」を読む


文教研のNです。

あまりのご無沙汰で挨拶するのも気が引けます。

文教研も新しい年度に入り、また、学校では新しい学年がもうじき始まります。

私自身、新たな気持ちでこの春を迎えたいと思うしだいです。

どうぞ本年もよろしくお願いします。

「益田勝実の仕事 5」
ご承知のように、文教研の例会では今、益田勝実氏の『国語教育論集成』(ちくま学芸文庫「益田勝実の仕事 5」)を読みあっています。

自分自身の勉強不足で、益田勝実氏の国語教育関連の文章を読むのは初めてでした。

読んでみて、本当の国語教師の仕事はなんだったか、あらためてその実際に存在した教師の姿に触れ、強い励ましを受けた、というのが実感でした。


冬合宿から一月例会にかけては「T しあわせをつくり出す国語教育について 初期の文学教育論」を中心に読みあいました。

1950年代前半、益田氏が定時制高校教諭としての現場に足を据えながら、文学教育の理論面の充実を模索された時期の文章です。


例会では、その実践のあり方に深い感銘を受けると同時に、熊谷理論との対比を通して、そこにある問題点が探られていきました。

内容に関してはニュースで詳細が伝えられています。あくまでこの本の魅力の個人的な紹介として、印象深かった点を一点だけご紹介します。


それは親を巻き込んでいく教育実践のあり方です。

教室では話し合いは数人のグループに分けられて進められます。益田氏はその間をめぐりながら話し合いに積極的に参加していきます。

たとえばそんな中から話題になっていく、生徒の生活の中での問題。生徒同士のやり取り。それらがまた作文というかたちになり、お互いが話し合う舞台を移していきます。
そして、さらにそれを家で、仕事する母親の横で読んで聞かせる宿題を出す。親は子どもの読む作文を聞いて、自分の子どもだけではない、子どもの友達の問題をわが子と一緒に考えるようになる。そしてまた、友達の親の立場に共感し感銘を受ける中で、親同士が人間としてつながっていく。


今の私たちの状況とはあまりに違う、といってしまえばそれは確かです。しかし、経験的にいって、自分が親の立場として親同士がつながっている場面もあること。また、教師として授業を通して子どもたちに、親との関係を深めさせる契機が存在することは確かだと思います。そして、そうしたことが実現しているとき、大人も子どもも優しく安心した気持ち、そして、がんばる気持ちになるのではないでしょうか。連帯を作り出す国語教育、そうしたことを忘れずに、実践していきたいと思いました。


こういう類の本を読むのは、ちょっと億劫、という方もあるかもしれません。

しかし、会員の一人が「例会には出られないけれど少しずつ読んでいます」とおっしゃっていました。

本当に、かえって忙しくて何をやっているのか分からなくなるとき、少しずつ読むことで大切なことを思い出させてくれる本だと思いました。


さて、これから少しずつ益田氏の仕事も時代が進んでいきます。

彼の仕事の中に表われる変化にも注目しながら読み進めて行きたいと思います。


〈文教研メール〉2007.2.18 より


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