熊谷 孝監修/文学教育研究者集団 著
文学の教授過程 
         
『文学の教授過程』函


1965年8月
明治図書出版株式会社 発行

A5版215頁
定価700円
絶版
 わたしたちは一年あまり、第二信号系の理論を中心にさまざまの伝えの理論の学習をつづけ、また、多くの作家・作品の研究や教材(教材化)研究、さらには実践に実験的な意味をもたせての授業研究をつづけました。そういう一年がかりのわたしたちの共同学習と集団討議の結果を、中間報告のかたちでまとめてみたのが、つまりこの本だということになります
 この本は名実ともに、わたしたちの共同執筆になるものです。サークル・文教研(文学教育研究者集団)に結集した教師たちの集団思考の所産──と、そういっていいかと思います。これは、いわゆる意味の合著や共著、あるいは原稿を寄せ集めてつくった編集物とはぜんぜん性質を異にしています。
(本書「はじめに」より)  
監修者:熊谷 孝(くまがい たかし)
1912年東京に生まれる。1938年法政大学大学院修了、法政大学助教授を経て、現在国立音楽大学教授。 著書に『芸術とことば』(牧書店) 『文学教育
』(国土社)その他。[奥付による]
      
  内 容

   はじめに

T 国語教育としての文学教育       熊谷 孝

1 文学教育とは何か

 (1) 文学教育は可能か
 (2) 文学教育の任務と限界
 (3) 文学の機能を生かして



2 国語科の教科構造と文学教育

 (1) 文学教育は国語教育か
 (2) 記号としての言語・信号としての言語
 (3) 国語自体の教育としての文学教育
 (4) 文学の授業・文法の授業(教科構造・T)
 
 (5)  
文法体系(教科構造・U)
 (6) 国語科と文学科(教科構造・V)
 (7) 話し言葉・作文・読解(教科構造・W)
 (8) 文学の論理と教材化の論理




U 低学年の授業

序 ──文学教育の方法的特質 童話の季節


1 いっすんぼうし(一年 東書・他)

 (1) おとぎ話の世界〈作品について〉
 (2) 子どもの“夢”とかさねあわせて〈教材化の視点〉
 (3) おはなしのリズムに即してイメージ化を〈指導過程〉


2 さるのいきぎも(一年 国土社刊)

 (1) 民族の知恵の総決算〈作品について〉
 (2) 民話群として〈教材化の視点〉
 (3) 「だます」ことの意味をつかむ〈指導過程〉


3 ちびくろ・さんぼ(二年 光村)

 (1) 新しいメルヘンの世界〈作品について〉
 (2) 行動とスピード感にうったえて〈教材化の視点〉
 (3) 「ぐるるる…」の語感をたいせつに〈指導過程〉

4 マーシャとくま(二年 福音館刊)

 (1) 本格的な“絵物語”〈作品について〉
 (2) 巨人マーシャと超人アトム〈教材化の視点〉
 (3) “絵物語”の特質をいかして〈指導過程〉




V 中学年の授業

序 ──中学年段階の方法的とす質 善玉・悪玉の季節


5 はだかの王様(三年 学図・他)

 (1) アンデルセンの世界〈作品について〉
 (2) ふたりのはたおり〈教材化の視点〉
 (3) だまされる者のみじめさ・こっけいさ・だまし方のおもしろさ〈指導過程〉



6 海のおばけオーリー(三年 岩波書店刊)

 (1) 人間疎外へのいかり〈作品について〉
 (2) 幸福の条件〈教材化の視点〉
 (3) オーリーの感情を軸にして〈指導過程〉


7 りょうしと金のさかな(四年 大日本)

 (1) 善玉・悪玉の世界ではない〈作品について〉
 (2) 善意の限界〈教材化の視点〉
 (3) 「三十と三年」の体験をくぐりながら〈指導過程〉


8 さやからとび出た五つのえんどう豆(四年 岩波書店刊)

 (1) 作家の意図をこえた主題〈作品について〉
 (2) 「ドブに落ちた豆」に焦点を〈教材化の視点〉
 (3) ヒューマンな感情を足場にして〈指導過程〉




W 高学年の授業

序 ──高学年段階の方法的特質 ロビンソー・クルーソーエイジ


9 妹の宿題(五年 大日本)

 (1) 人間の可能性〈作品について〉
 (2) ヴィーチャをかえた集団の評価にたって〈教材化の視点〉
 (3) 読者との共軛性をふまえて〈指導過程〉


10 りこうすぎた王子(五年 岩波書店刊)

 (1) 豊かな民族性と世界的伝統の上に〈作品について〉
 (2) 子どもたちの自己凝視のために〈教材化の視点〉
 (3) りこうすぎることの意味をさぐる〈指導過程〉


11 最後の授業(六年 大日本・他)

 (1) ドーデー文学の世界〈作品について〉
 (2) 牢獄のカギとしての民族語〈教材化の視点〉
 (3) フランツ少年の眼をとおして〈指導過程〉


12 空気がなくなる日(六年 ポプラ社刊)

 (1) 児童文学の“古典”〈作品について〉
 (2) 二・一スト前後の民衆の体験を媒介に〈教材化の視点〉
 (3) 喜劇精神としての笑いの自覚〈指導過程〉




X 学年別・基本教材 解題

一年生

 (1) ねずみのおきょう  (2) おおきなかぶ  (3) オンロックがやってくる


二年生

 (4) スーホーのしろいうま  (5) まほうの馬 


三年生

 (6) だいくとおにろく  (7) つるの恩がえし  (8) 木竜うるし  (9) きゅうり
 (10) イヴァン王子と、火の鳥と、灰色のオオカミの話


四年生

 (11) ドリトル先生アフリカゆき  (12) くろんぼノビの冒険 
 (13) フランダースの犬  
 (14) アンデルセン童話  (15) ウサギどんキツネどん



五年生

 (16) 怪談  (17) イワンのばか  (18) エーミールと探偵たち  
 (19) 勇士ルスランとリュドミーラ姫



六年生

 (20) あたたかい右の手  (21) ロビンソン・クルーソー



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