N さんの例会・集会リポート   2010.12.11例会  
   
   藤岡寛己「グラムシとロマン=ロラン――グラムシによるロマン思想の受容について」
文教研のNです。
前回例会で検討されたのは、藤岡寛己「グラムシとロマン=ロラン――グラムシによるロマン思想の受容について」(福岡国際大学紀要NO23/2010年)です。
井上ひさし氏が嶋田豊氏との対談の中で話題にしていた「知性の悲観主義、意志の客観主義」という言葉についての出典をめぐり、 I さんが紹介してくれた論文です。
会場の関係で1時間ほどの時間でしたので、今回は I さんがグラムシについて補足された何点かだけをお伝えします。

グラムシは世界的に引用されることの非常に多い思想家であること。
しかし、日本では七〇年代に「獄中ノート」が出されるが翻訳の問題で対立し、1巻のみしか出ていないこと。
現在手に入りやすいのは、ちくま学芸文庫『現代の君主』、平凡社ライブラリー『グラムシ・セレクション』であること。

グラムシは、1時間の検討でも引きも切らず意見が出るほど、非常に魅力的な思想家であり哲学者ですが、
そのグラムシに匹敵するのが本来であれば戸坂潤であること、しかし、日本では“獄中ノート”を残すことすら許さなかったことなど、が指摘されました。

その他、グラムシ(1891−1937)は芥川龍之介(1892−1927)と同年代であり、ともにロマン・ロラン「ジャンクリストフ」に言及していること、また、レーニンを評価する点など、様々な共通点も話題にされています。
今後、グラムシについて特に検討することは出来ないと思いますが、その発想に学んだ井上ひさしを検討する中で、現代市民社会がファシズムとのかかわりの中でどう育ってきたか、大きなうねりが見えてくるかもしれません。


〈文教研メール〉2010.12.23 より


 Nさんの例会・集会リポート前頁次頁